
ICTによる国際協力や社会イノベーションを学ぶ|イノベーターコース
日本で初めてとなる、ICT技術を活用した社会課題解決を実践できる人材を育成するコース
2016/6/20
イノベータコース修士1年 エドリス ハセン ケデュール(エチオピア)
研究テーマ:家畜疾病の防止と制御システム
エチオピアは全人口の約83パーセントが農業に従事しています。私自身は農業省の職員として仕事をしていますので、農産物に対して、日々たくさんの課題と向き合ってきました。中でも重要な産業のひとつである畜産業において、家畜に蔓延する疾病は大きな問題になっています。過去何十年もの間、地域やNGO、政府の多大な努力によって、家畜の疾病を制圧してきました。深刻な伝染病である牛疫は良い例で、2010年にエチオピア国内では根絶されました。しかし、迅速に情報を得ることや課題を克服する手段を得ることなどについては、まだまだ課題が残っているのが現状です。現在エチオピアでは家畜に病気が出た場合、その情報を集めるのも警告するのもすべて手動で行われています。その場合、情報が伝わるのが遅れる、正確に伝わりにくいなどの問題がどうしても起きてしまいます。これらを解決するのにICT技術が使えないかと考えていました。
まずこれまでの情報システムがどのように働いているのか、現在の状況を正確に把握する必要があります。それらをWebアプリケーションで置き換えることが第一段階で、家畜の病気が発生した時期や場所の情報をSMSやメールで即座に伝えたり、また各農家からの情報も即座に集められるように、システムを整備します。アプリケーションには疾病などの家畜に関する情報だけでなく、日々の仕事を左右する気象、地域のニュースなど有益な情報も提供していきたいと考えています。
家畜の疾病を蔓延させない方法を模索 ~情報をICT技術で守り伝えるために(前編)~
情報が伝わるのが遅れる、正確に伝わりにくいなどの問題がどうしても起きてしまいます。これらを解決するのにICT技術が使えないかと考えていました。
エチオピアには実に多数の民族が暮らしており、言語だけでも約80種類存在します。識字率は上がっていますが、英語が話せる人は少なく、エチオピア国内でも多様な言語があるため、情報を即座にそれぞれの地域の現地語に変換する必要があります。しかしこれを私たちは弱点として捉えてはいません。エチオピアの誇れる文化のひとつだと考えていて、さまざまな言語を話す民族がお互い助け合い、調和を保って暮らしているのがエチオピアの長所です。多くの宗教も存在しますが、うまく共存し、平和を守って生活しています。
調和を大切にすることを象徴するエチオピアの文化に「コーヒーセレモニー」があります。世界的にも有数なコーヒーの産地であるエチオピアでは、家族や隣近所の人たちと一緒にコーヒーを楽しむ文化が根付いています。「カンカンカン」とコーヒー豆をつぶす音が近所から聞こえてきたなら、それは「コーヒーセレモニー」に誘う合図で、隣近所、皆がぞろぞろとその家に集まってきて、コーヒーと共に話に花が咲きます。コーヒーはひとりで飲むものではない、というのがここの常識です。もちろん現代では電話をかけて誘い合うことが普通になっていますが、こんな風景がまだ田舎に行くと残っていることは、エチオピアの愛おしい風景だと思います。
学んだ知識を生かしエチオピアで活躍するのが夢 ~情報をICT技術で守り伝えるために(後編)~
将来はやりたいことがたくさんあります。修了後は「情報システム」と「環境マネジメント」の博士号を取得したいと考えています。「気候変動」や「森林マネジメント」についても興味があるので研究していきたいです。